画像:株式会社東芝より引用
株式会社東芝は2020年10月19日、次世代暗号通信と呼ばれる「量子暗号通信」の研究開発事業に力を入れ、2025年度までに完成させる方針を明らかにしました。
量子暗号通信は、絶対に破られないと呼ばれる究極の暗号通信技術です。機密保持に悩む米国や中国をはじめ、各国が争っている開発を進める技術ですが、ここにきて東芝も技術完成を急ぐと発表。
同社によると、すでに米国ベライゾン・コミュニケーションズや英国BTグループと提携したほか、シンガポールや韓国の通信会社とも開発協議を進め、現地の光ファイバー回線を利用して技術運用を試行したり、模擬的な不正アクセス実験を繰り返しているとのこと。
量子暗号通信は防衛や政策などの政府需要のほか、金融や医療などの民間事業においても高い需要が見込まれることから、完成を急ぐものと見られます。
参照記事量子暗号(Quantum cryptography)とは?仕組みやメリット、注意点について徹底解説/サイバーセキュリティ.com
不正なアクセスにより姿を変える暗号鍵
量子暗号通信とは、情報通信に利用される光子に反応してその内容を変容させる性質を持つ、次世代暗号通信です。
これまでの暗号通信はこうした「変容」の性質を持たないため、高性能な情報処理を行うことで「いつか解読される」というリスクを内包していました。特に現在は従来のスパコンを上回る量子コンピューターの技術開発が進んでいるため、完成した暁には「いまの暗号通信が役に立たなくなるのでは?」という懸念も生じていました。
しかし、量子暗号通信では不正アクセスによる光子に反応することで、瞬時に別の暗号パターンへと姿を変えるため、どれほど素早い処理能力を有していても、突破は事実上不可能とされています。世界各国では「絶対に破られない究極の暗号」として各国で期待されている技術です。
参照2020年度より順次国内外で積極的に事業を展開し、量子暗号通信の実用化を牽引